江戸前の技が集結された春子鯛の鮨の魅力‼︎

↑豊洲市場ではこの様に店頭に並んでおります

 

小さな春子鯛ですが、ひとつひとつ丁寧に処理をされ傷付かない様に梱包され、豊洲市場に運ばれています。

 

↑手のひらサイズの春子鯛。綺麗な桜色をしております。

〝鮨かの〟では定番の握り。春子鯛。柔らかな口当たりと風味豊かな旨味が楽しめる握りになります。

春子という名前からも、春が旬の鮨に思われがちですが、産地を限定しなければ、通年楽しめる1貫で御座います。

小さな魚体ゆえに手が掛かる所も多くあるので、一般的には扱いづらいイメージも有るかも知れませんが、とても仕込み甲斐のある魚でもあります。

今回はそんな春子鯛について少し掘り下げてみたいと思います。

 

【春子鯛 かすごたい】

 

一般的には〝マダイ〟〝チダイ〟〝キダイ〟。3種の鯛の幼魚の総称とされています。

鮨かのが主に仕入れるカスゴの産地は鹿児島県出水市。そして、鮨かの独自ルートの小田原漁港産。

出水市のカスゴは身が柔らかくほのかな旨味が特徴。また、相模湾の定置網にて揚げられる小田原産春子鯛は瑞々しい旨味も持ち合わせています。

少し大きめの春子鯛になると、花鯛と呼んだりもしますね。見た目も綺麗な華鯛です。

 

↑片身1貫サイズのカスゴ。コロコロしてますね。

 

ピッチリと付いたウロコを取り第一段階の仕込みを終えた春子。身の厚い部分だけを使用します。

魚は身を開いた時から空気に触れて劣化が進むと思うので春子鯛は当日握る分だけを仕込みます。

鯛の幼魚である春子は柔らかく傷がつきやすいので、丁寧に慎重におろしていきます。

かすご鯛の鮨は江戸前鮨伝統的な酢じめにする手法も有りますが、鮨かのでは主に旨味を閉じ込める昆布じめにてご提供しております。

 

↑湯霜にした後。余分な水分は綺麗に拭き取ります。

 

旨味の強い皮目に熱湯をかけ、柔らかくし、食べ易くする為の湯霜。余計な熱が入らない様に素早く氷水に放ち、素早く水分を拭き取る。

ひと手間ひと手間を気を抜かず行う事で生まれる柔らかな食感なのです。

 

↑昆布〆に。ピッチリと旨味を閉じ込めます。

 

そして身側に昆布を当てる。脱水と旨味を移す事が目的です。使用する昆布はわりと大きめです。

この時使用する昆布の厚さは薄め。春子鯛の繊細な旨味は厚い昆布では風味が負けてしまいます。薄めな昆布を贅沢なほど、身全体に当たる様にします。

この昆布を仕入れている豊洲市場には、上質で易い昆布を扱っている乾物屋さんも有ります。買い出し人である私達にとって豊洲市場はとても便利な施設なのです。

いつか豊洲市場についてもブログに書いてみますね。

 

 

ラップでキュッと密閉します。昆布に当てるのは大きさにもよりますが、3時間ほど。昆布じめは浅くても〆すぎてもダメ。見極めが重要なのです。

 

↑硬い昆布が魚の水分を吸って柔らかくなりました。

 

カチカチに硬かった乾燥昆布は春子の水分を吸い、柔らかくなってます。脱水された春子はシットリとします。そして、握るまで休ませて味を馴染ませる。

 

ふんわりと優しい旨味を持つ春子鯛の握り。

 

湯霜の際に熱が入ってしまった所をトリミングし、シャリを包み込む様、握りサイズに切り付け。

そして上に芝海老で仕上げたオボロをのせる。少しの旨味と甘味をプラスする目的です。江戸前鮨の仕事ですね。

フワッと柔らかな春子の風味とそれを支えるほのかな温かい赤シャリ。輪郭を整える山葵。そして煮切り醤油。この全ての食材が合わさり春子鯛の鮨が完成します。

 

カスゴの鮨は、その柔らかな味わいを生かす為、おまかせコースの握り序盤にご提供しております。季節ごとの味の変化も楽しみな1貫ですね。

最近(令和3年10月)では、小田原の秋のチダイが絶好調。型は大きめながら力強い味わいも持っております。〝純米吟醸 秋あがり〟などと合わせたらなんともホッとするひとときになるかと思います。