女将の日本酒旅PART3!鍾乳洞に1番近い蔵。落酒造場で仕込みのお手伝い‼︎

岡山県の山奥で地元の方達と和気あいあいの日本酒仕込み。大正の鶴を醸す落酒造場へ訪問しました!

令和5年1月。鮨かのが取引している岡山の酒屋【酒うらら】さんから連絡がありました。

「大正の鶴の酛すり、1/31(火)にやりますよ!」

ちょうど鮨かのは連休予定の日でした。

酛すりは1日だけで完結させなければならない大切な作業。

岡山まで日帰りかぁ…しかも日本酒蔵は大体ヘンピな場所にある。

少し迷いましたが「行きます!」と返事をした所から今回の日本酒ひとり旅が始まりました!

 

もくじ

 

 

鍾乳洞にいちばん近い日本酒蔵

 

実は鮨かのが〝大正の鶴〟を扱い始めたのは、今からほんの数ヶ月前なんです。

米の旨味はしっかりと出ていてどこか優しい、そんな味わいのお酒です。

お客様ウケもよく、一気に気に入りました。

 

http://taishonotsuru.com/

 

蔵の場所は岡山県真庭市。

東京から岡山まで新幹線で3時間ほど。

岡山駅から伯備線に乗って1時間15分で方谷という無人駅に到着。そこから更に車で25分という場所です。

 

 

鳥取との県境に近い山奥。水が綺麗で、蔵の裏の川は「ホタルの里」といって、5〜6月はホタルが毎日の様に乱舞するそう。

蔵から歩いてすぐの所には、鍾乳洞もあります。

その為か、石灰質の湧き水が湧いています。

「鍾乳洞に1番近い蔵で売り出しましょう」なんて話も。

 

歩いても行ける距離にあります。県の天然記念物指定

 

〝大正の鶴〟を醸す落酒造場ってこんな蔵

 

落酒造場。

現在の落昇(オチ ノボル)さんで5代目の蔵です。このお名前直ぐ覚えられるそう^_^

代表銘柄は「大正の鶴」。

4代目の先代はまだご健在ですが、

5〜6年前まで、5代目が1人で醸造していました。

現在は落さんの右腕、原さんが入って2名で醸造している、小さい蔵です。

 

 

その中でも私が気に入ったのは

〝大正の鶴 rising 朝日米〟と酒米違いの〝rising 雄町米〟。

この〝risingライジング〟とは蔵元杜氏のお名前、落昇さん。そのまんま【昇=ライジング】という事です笑。

 

右が朝日・左が雄町。ラベルデザインは〝昇〟という文字が。

 

朝日米は地元の食用米です。先代の4代目から使用し始めたそうで、朝日米で醸造してる蔵はかなり限られています。

しかも飯米なので、溶けにくく醸造はかなり難しい。ブルーオーシャンである酒米を使い続けた為、有る意味朝日米のスペシャリストと言ってもいいのでは無いでしょうか。

それは蔵の「地元米を使う」という想いからきたものです。

 

5代目落昇さん。可愛らしい方です^_^

 

そして雄町はご存知、岡山県が誇るブランド酒米。しかも〝赤磐の雄町〟となると、魚で言うと〝大間のマグロ〟の様な存在で、新参者が「使いたい」といってもなかなか卸してはくれない酒米です。こちらの蔵はその赤磐産雄町で醸造してます。

両方とも熟成酒で後味はさっぱりながらも、旨味がじわっと出てる、そんなお酒です。

 

酛すりって何のこと⁉︎

 

さて、今回私が行くキッカケとなったのは

【酛すり】のお手伝い。

では酛すりってなんなんでしょうか?

これは生酛造りでのみ行われる作業です。

生酛造りとは昔ながらの日本酒の仕込み方で(現在は90%が速醸仕込み)、

通常より時間の掛かる仕込み方です。

 

日本酒の仕込みというと、タンクに棒を入れて唄と共にかき混ぜる。そんな光景を思い浮かべる方もいると思います。まさにあれが酛すりです。

 

2回目の櫂入れ。まだ米がつぶつぶしてます

 

 

蒸米・麹・水を混ぜて行くのです。

1回目、2回目、3回目と3回行われ、それぞれの間は3時間置きます。

だんだんと粒々の米がペースト状になっていきますが、ペーストにする事だけが目的という訳ではありません。

この混ぜる作業(櫂入れ カイイレ)をする事で、自然界の乳酸を取り入れ、強い菌を作り酵母を増殖させていきます。

因みにこの酛すりの事を〝山卸し ヤマオロシ〟とも言います。

なので、この酛すりの作業をしないのが「山卸し廃止」=「山廃 ヤマハイ」なのです。

 

大正の鶴では生酛仕込みはやっていませんでしたが、以前より取引先の酒屋さんに「生酛やったら(水質などで)向いてると思う」と言わてれいて、意を決して2年ほど前から生酛仕込みを少量始めたたそうです。

生酛は協会酵母(酵母は蔵が協会から購入する物で、味の方向性を決める重要な物)を添加しないで自然界の菌で醸造します。

ある意味賭け。とも言えますね。

蔵にとってはリスクなんです。

そこに2年前からチャレンジしているのです。

 

落酒造場の初年度の生酛の出来は、

できて直ぐは味が薄かったそうですが、少し(一年以上)寝かせたら味が乗って良くなったそう。

 

そこが日本酒の魅力かもしれません。

実際、私が蔵に訪問した際、すでに完売の2年前の生酒の生酛を試飲で頂きましたが、とても美味しかったです。

この日私が到着したのはお昼前。1回目の酛すりには間に合わず、ちょうど終わって皆さんお昼休憩の時。

その為、私は着いてすぐ日本酒とお弁当が振る舞われました笑。

 

さあ、3時間置いて2回目の酛すりの時間です。

米の形がまだしっかりとあるので、力仕事です!

 

 

2人1組になってそれぞれ櫂棒(混ぜ棒)を持ち、掛け声に合わせて混ぜて行きます。

タイムキーパーがタイマーで時間を計ります(確か3〜4分)

「そぉ〜れっ!そぉ〜れっ!」後半は腕が疲れてきます。

そして2回目の酛すり終了です。

 

表面を綺麗に均して温度チェック

 

私はこの3時間後の3回目をやると帰れなくなるので、この後蔵見学をさせて頂き退散となります。

 

麹室

 

落さんに蔵内の見学と、原さんに先程の鍾乳洞に連れて行って頂きました。

 

甑(米を蒸します)

 

蔵元や地元の方と触れ合って

 

移動時間の方が圧倒的に掛かるのですが、

落さんにお会いしたかった、という目的もあり今回強行訪問となりました。

実は今回の酛すりには、地元岡山の飲食店の方、酒屋の方、日本酒ライターの方もお手伝いに来ていました。

皆さん個性的で面白い方の集まり。

皆さんちょっと〝ゆるめ〟な感じがまた良い。

酒うららの道前さん曰く

「大正の鶴の酛すりは、独特のピリピリ感が無く和気あいあいと出来るのもあって、今回お誘いしたんです」

これは、落さんの人柄に皆さんが集まったのだと感じました。

5代目落さんの醸す日本酒にはそんな人柄が〝ひっそり〟と顔を出す、

そんな味わいの日本酒なのです。

 

まとめ

 

蔵訪問をすると、どんな人がどんな想いで作っているのか、それが良くわかります。

飲む時にそれを重ねると日本酒の味わいがもっともっと奥深く味わい深くなりますよ‼︎

鮨かのの日本酒は、そんな女将の説明付きでお楽しみ下さい。

造り手の想いを載せてご提供させて頂きます!